データヘルス計画
データヘルス計画は、医療費データや健診情報等のデータ分析に基づいて、PDCAサイクルで効率的・効果的な保健事業を実践するものです。すべての健康保険組合は平成27年度からの実施を国から求められています。
- POINT
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- データヘルス計画は、レセプト・健診情報等のデータ分析に基づき、保健事業を効果的・効率的に実施するための事業計画
- 科学的なアプローチにより事業の実効性を高めていくことがねらい
- 特定健康診査等実施計画とは相互に連携して策定
- 第3期は2024年度から2029年度までの6年間
データヘルス計画の目的
平成25年6月に政府が閣議決定した「日本再興戦略」の中で、「国民の健康寿命の延伸」が重要施策として掲げられています。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、健康寿命を延伸することで健康寿命と平均寿命の差(日常生活に制限のある健康でない期間)を縮めることが重要です。データヘルス計画はその実現に向けた計画です。
データヘルス計画の特徴
データヘルス計画は、PDCAサイクルに沿った事業運営を行います。レセプトや健診情報等を活用したデータ分析を行い、組合の医療費の状況の把握、健康リスクの階層化、保健事業の効果が高い対象者の抽出などを行います。やみくもに事業を実施するのではなく、データを活用して科学的にアプローチすることで事業の実効性を高めていく。これがデータヘルス計画のねらいです。

特定健診制度との関係
平成20年度に開始した特定健診制度は、健診データを電子的に標準化し、データに基づき保健事業のPDCAを回すことをねらいとしています。また、特定健康診査等実施計画は、保健事業の中核をなす特定健診および特定保健指導の具体的な実施方法等を定める計画であることから、保健事業を効果的かつ効率的に実施できるよう、データヘルス計画と特定健康診査等実施計画とは相互に連携して策定することが望ましいとされています。
- 参考リンク
計画の期間および公表・周知
第3期データヘルス計画の期間は、2024年度から2029年度までの6年間です。2024年度から2026年度までを前期、2027年度から2029年度までを後期に区分けし、前期終了時に実施される中間評価をふまえ、必要に応じて、後期計画の見直しを行います。
また、保健事業の目的や内容が加入者、事業主等の関係者に理解され、事業の実効性が高まるように、データヘルス計画はホームページや広報誌等で公表され、関係者への周知が図られることになっています。
日本信号健康保険組合 第3期データヘルス計画(令和6年度~令和11年度)
1 データヘルス計画と特定健診・特定保健指導計画

健康保険組合の加入者の健康データを活用し、個人の状況に応じた保健指導や効果的な予防・健康づくりをデータ分析に基づいて行う保健事業であるデータヘルス計画は平成27年度から始まりました。平成29年度までの第1期3年間は試行期間で、第2期(平成30年度~令和5年度の6年間)から本格稼働となりました。
のちにデータヘルス計画の中心となる特定健診・特定保健指導計画は平成20年度から始まりました。第2期までは5年スパンでしたが、第3期のスタート平成30年度からはデータヘルス計画と同期させるため6年スパンとなりました。6年スパンとしたのは、3年スパンである介護保険計画と同期させるためでもあります。
令和6年度からデータヘルス計画は第3期、特定健診・特定保健指導計画は第4期を迎えます。
2 データヘルス計画の構造
働き盛り世代では、自らの健康は二の次になりがちです。ほとんど自覚症状のない生活習慣病の予防行動を自主的にとるのは至難の業です。
そのため、データヘルス計画では、データを活用することで加入者個々に気づきを与え、生活習慣改善の必要性を理解してもらうといった加入者への意識づけがポイントとなります。

また、事業主と健康課題を共有することで、個人が健康行動を実践しやすく保健事業が浸透しやすい職場環境を作ることも同様に重要です。
このように、加入者への意識づけと職場環境の整備(「保健事業の基盤」)を図りながら健康課題に応じた個別の事業を導入することで、保健事業の効果・効率を上げる構造を作ります。
当健保組合では健康宣言事業への参加を通じて「職場環境の整備」を、マイヘルスレポートの配付によって「加入者への意識づけ」を行っています。
令和5年度は、中小規模法人である19事業所すべてが健康宣言事業に参加、マイヘルスレポートは被保険者の8割に配付と、保健事業の基盤と呼べるものになっています。
3 健康課題と結びつけた個別の事業
データヘルス計画=特定健診・特定保健指導、ではありません。特定健診・特定保健指導はデータヘルス計画の中核事業で、さまざまな健康課題に対応する最大公約数的な保健事業と言えますが、あくまでも健康課題を解決するための個別の事業のひとつです。
当健保組合の健康課題と個別の事業の対応は下表のとおりです。

主要健康課題の状況は以下の通りです。
運動習慣
運動習慣を有する方とは
- 1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2回以上、1年以上実施している
- 歩行又は同等の身体活動を1日1時間以上実施している
- ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速い
のうち、2つ以上該当する方で、ハードルが高く、運動習慣を有する方の割合は全健保平均も23.3%と低いですが、当健保組合の18.3%はかなり低いと言わざるを得ません。事業所別にみても全健保平均を上回るのは4事業所しかありません。
ウォーキングキャンペーンなど、運動習慣のきっかけづくりの保健事業は欠かせません。なお、ウォーキングキャンペーンは参加率が4割を超え盛況です

睡眠の状況
健診時に記入する問診票で「睡眠で休養が十分にとれている」に、はいと答えた人の割合です。
当組合平均は健保連平均・共済組合平均と比べ6ポイントも劣っています。
被扶養者の割合は71.1%と高いのですが、被保険者の割合は56.2%と低くなっています。


喫煙習慣
喫煙習慣のない方の割合は組合全体では平均値と同程度ですが、事業所別にみると、8つの事業所では7割を切っており、健康課題としてとらえるべきものです。

歯口腔に係る医療費の状況
金額、件数ともに毎年上位3位に入る疾患です。
歯周病等の歯科疾患は糖尿病をはじめとした他の全身疾患に影響することが示唆されています。歯周病は万病のもとです。

4 特定保健指導の課題
特定健診・特定保健指導は、さまざまな健康課題に対応する最大公約数的な保健事業と言えます。
第3期(平成30年度~令和5年度)特定保健指導の分析

特定保健指導の実績はこれまで支援レベル別(動機付・積極的)にしか示していませんでしたが、別の区分で見るとこれまで見えていなかったこと見えてきます。
➡特定保健指導対象者率
本人(被保険者)は約25%。約4人に1人が対象となっています。特に男子は毎年27%台で約3人に1人が対象となっています。女子は10%台ですが、近年は増加傾向にあります。
➡終了率
家族(被扶養者)の終了者率が低く、全体の率を下げています。本人(被保険者)の終了率は女子のほうが高くなっています。
第4期は支援レベル別(動機付・積極的)ではなく、本人・家族別に計画を立てることとしました。
5 第4期特定健診・特定保健指導計画
当健保組合の数値目標は下表のとおりです。
最終年度(令和11年度)の特定健診受診率90%、特定保健指導終了率60%は全国の単一健保組合の目標値と合わせています。

特定健診
➡受診率
令和4年度の実績は88.2%と、最終年度目標値90%にすでに近い状況です。特に家族の受診率62.5%は健保平均よりよい値ですが、全体で90%を達成するためには最終年度までに若干高くする必要があります。
特定保健指導
➡終了率
終了者数(参加者数)は令和5年度で200を超えており、最終年度の236はそれほど高い目標ではありません。
終了者率60%を達成するためには特定保健指導対象者を減らすことが必要であり、それがこの制度本来の目的です。
➡対象者率
最終年度の目標は、現行の20%超から15%に設定しました。これは高い目標です。
対象者を減らすために引き続き受診勧奨に力を入れます。
令和6年度から新たに電話健康相談のオプションとして二次検診ヘルスケアサポートサービスを開始します。
また、40歳になったときに特定保健指導対象者とならないよう、若年層(40歳未満)向け保健指導を行います。委託先は特定保健指導のコースで最も人気の高いRIZAPを予定しています。